専攻医研修コース
連携大学には遺伝子医療部門があり、下記のようにそれぞれ特色のある臨床遺伝医療を実践しています。各大学が作成するon the job トレーニングプログラムを、希望する専攻医に提供します。これにより多様で地域ごとでニーズの異なることが予想される難治性疾患マネジメントを担う高い能力を有する臨床遺伝専門医を養成します。
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プロジェクト概要
NGSD第1期「難病克服!次世代スーパードクターの育成(NGSDプロジェクト)」について
【背景】難治性疾患は、「症例数が少なく、原因不明で、治療方法が確立しておらず、生活面への長期にわたる支障がある疾患」と定義され、少なくともその70%は遺伝性疾患であると考えられています。近年のヒトゲノム解析研究の進展により、3,000種類以上の疾患において遺伝子レベルでの確定診断が可能となっており、遺伝子情報に基づく個別化医療が開発されてきていることから、適切な治療・ケアに結びつけられる疾患が増加しています。遺伝学的検査を適切に実施し、その結果解釈を正確に行い、小児期から成人期にわたり、かつ多臓器にまたがる障害を伴うことが多い難治性疾患を総合的にマネジメントできる医師を養成することが求められています。
【事業計画】そこで、中央診療部門として遺伝子医療部門が設立されており、特色ある遺伝子医療を実践している6大学(信州大学、札幌医科大学、千葉大学、東京女子医科大学、京都大学、鳥取大学)が連携して、1年間の on the job トレーニングプログラム(OJT)を開発・実践することとなりました。各大学は、本事業の研修を希望する医師(専攻医)を全国公募により、遺伝子医療部門所属の医員として毎年1名、1年間の採用としました。専攻医は、所属大学遺伝子医療部門で研修を行う以外に、他大学の4週間の研修プログラムに2つ以上参加することとし、各大学で展開されている特色ある遺伝子医療(適切な遺伝学的検査の実施と遺伝カウンセリング、および遺伝子情報に基づく治療、等)を経験することにより、多様で幅の広い難治性疾患で必要とされるマネジメント能力、すなわちヒトゲノム解析・遺伝学的検査の実施、結果判定、結果告知、遺伝カウンセリング、難病患者支援、難治性疾患治療開発、等の能力を養うよう計画しました。こうした活動を、全国遺伝子医療部門連絡会議を通じて発信し、全国的な普及を目指しました。
【第1期(2014〜2018年度)事業概要】本事業「難病克服! 次世代スーパードクターの育成」(NGSD)の目標は、全国遺伝子医療部門連絡会議で培われてきた6大学の連携を基盤に、on the jobトレーニング(OJT)を通じて、ゲノム時代の難治性疾患マネジメントを担うオールラウンドの臨床遺伝専門医を養成することです。そのために、平成26年度、各大学病院の病院長および診療科長会において承認を得、平成27年度以降は、NGSDに参加する専攻医の身分保証(医員枠の確保)が承認されました。また次世代シーケンサー等の遺伝子解析実習用の機器を整備し、毎月行われる遠隔会議において、各大学における準備状況を確認し、OJTカリキュラムを確定しました。
採択時に、推進委員会から指摘された受入れ医師数が少ないことについては、各大学での医員枠の確保が困難であることから、1年間フルタイムの研修コース(NGSD)以外に、各大学の特色ある遺伝子医療を短期間でも体験できる短期集中コース(インテンシブコース)を新たに設置し、ゲノム医療人材育成の普及を図ることとしました。また、修了要件や単位数・履修時間数の記載がないことについては、1年間のOJTでの、臨床経験(遺伝カウンセリング等)、ゲノム解析・遺伝学的検査等の症例数、および時間数を6大学共通のログブックに記載することとし、最終的には6大学連携協議会で評価を行うこととしました。
毎月行われる遠隔会議、年度末に行われる専攻医成果報告会、連携6大学の研修責任者・関係者が集う連携協議会、外部評価委員会などが計画通りに行われ、充実した事業がほぼ当初の計画通りに展開されました。また、平成29年度以降は、外部評価委員を2名増やし、計5名の外部評価委員とし、遠隔会議や専攻医報告会、連携協議会への案内、報告を行い、より充実した外部評価委員会を実施しました。
平成27年度から平成30年度において、平成27年度には計5名の専攻医が、平成28年度以降は毎年計6名の専攻医、のべ23名の専攻医がNGSDコースを修了し、全国の遺伝医療・ゲノム医療の現場で活躍しています。そのうち2名は臨床遺伝専門医資格を取得しました。臨床遺伝専門医の認定試験を受験するためには、3年間の臨床遺伝に関する研修が必要であるため、他の専攻医は今後、臨床遺伝専門医の認定試験を受験する予定です。インテンシブコースには、今までに計46名が参加し、遺伝カウンセリングの実践、ゲノム解析、細胞遺伝学的解析などの研修を受講し、スキルアップに繋がりました。
NGSD第2期について
5年間継続してきたNGSDプロジェクトを終了し、連携校で補助期間終了後の事業に関して相談した結果、さらなる発展を目指して、事業を継続することといたしました。1年間の専攻医コースを軸に、施設ごと特色があって期間や頻度の自由度も高いインテンシブコースも継続することになります。専攻医は病院遺伝子医療部門の医員として、すでに各大学で受入枠が確保されております。また、指導者も、連携施設の担当講座または病院診療部門の教員が指導に当たるので、新たに資金を調達して雇用する必要はありません。引き続き、信州大学が中心となり、各校(専攻医、インテンシブコース医師)の調整、連絡、各種イベントの実施などを担当いたします。
「難病」診療を推進する専門家である臨床遺伝専門医を養成することが本事業開始当初の目的でしたが、事業期間中に、遺伝性・先天性疾患分野(難病)のみならず、がんゲノム医療(がん遺伝子パネル検査、遺伝性腫瘍症候群など)、周産期遺伝医療を含め、あらゆる診療分野において、診療科横断的な遺伝医療・ゲノム医療を推進する臨床遺伝専門医の養成が急務となりました。「NGSD第2期」では、こうした幅広い領域の遺伝医療を体験・実践できるようなOJTを行います。さらに、全国遺伝子医療部門連絡会議加盟施設より新たな連携校を募集するとともに、時代に即したカリキュラムの見直しを含めた教育内容の発展を目指します。
これまで事業を牽引してきた福嶋義光・信州大学医学部・特任教授、斎藤加代子・東京女子医科大学附属遺伝子医療センター・特任教授を顧問とし、コース責任者は、信州大学の古庄知己・信州大学医学部遺伝医学教室・教授、同附属病院遺伝子医療研究センター・センター長(新事業推進責任者)がつとめます。連携校の代表者については、札幌医科大学は櫻井晃洋・札幌医科大学医学部遺伝医学・教授、千葉大学は松下一之・千葉大学医学部附属病院検査部部長、遺伝子診療診療教授、東京女子医科大学は山本俊至・東京女子医科大学遺伝子医療センターゲノム診療科・教授、大学院先端生命医科学系専攻遺伝子医学分野・教授、京都大学は小杉眞司・京都大学医療倫理学・遺伝医療学・教授、鳥取大学は難波栄二・鳥取大学研究推進機構研究戦略室・教授、岡山大学は平沢晃・岡山大学学術研究院医歯薬学域臨床遺伝子医療学分野・教授が担当します。さらに、全国遺伝子医療部門連絡会議を通じて、事業の発信、連携校の拡大を行ってまいります。